激動する明治時代にはじまり130年、セーフティネットの先駆けとして福祉の道を切り拓く。
神戸光有会は、福祉の概念がない明治時代(1890年)に、「困窮する無告の市民を救済する」という理念で「神戸報国議会」を創設されました。創設者の一人であった小曽根喜一郎は、実業家でありながら、人道主義者で社会事業に強い関心があり、神戸報国議会の運営に財政援助を含め中心的役割を果たし、以来、時代のニーズにこたえながら神戸における福祉の道を切り拓いてきました。
やがて130年を迎えますね。貧民救済事業の先駆けであり、これほどの歴史と実績がある法人は少ないのではないでしょうか。戦災で多くの資料が焼失し、残された僅かな資料からも、ギリギリのところで生きる人々を救ってきた歴史が記してあります。明治維新後、神戸港が開港し、神戸の街に、出稼ぎ労働者が流入しますが、不況になると大量の失業者があふれました。そういう社会情勢の中で、まず取り組んだのが,1892年に困窮する子供を救済するための「育児院」及び貧困の高齢者や病人を診療する「施療院」の設立でした。(これが神戸報国議会の社会事業の出発点です。)その後も行政等からの要請を受け、行旅病人、遺児、母子、障がい者、刑余者、水害被害者、東北の大凶作被災児らを収容保護してきたことがわかります。
明治天皇・皇后から天恩を授かったことや、大隈重信はじめ政府高官らが、次々視察に来られた記録もありますし、昭和の時代にも皇族方に視察頂く栄を受け、それがニュースとなり法人の存在に光を当てて頂くことになりました。
今の人は「無告の市民」と言ってもピンと来ないかもしれませんが、明治・大正時代はもちろん、戦後は貧しく身寄りのない人、声を上げられない人が沢山おられました。今もまた、別の意味で救いの手を必要としている人がたくさんおられます。
その通りですね。
神戸光有会は、明治の時代から現在まで、市民生活のセーフテイ―ネットの役割を担ってきました。行政からの助成もままならない時代から、財政基盤として小曽根財閥の財政支援がなければ、今の神戸光有会は存在はして来れなかったのではないかと思います。ありがたいことです。
初代小曽根喜一郎の「たとえ巨大な利益を得る事業でも、国家・社会の繁栄に寄与しないものには手を出さない」という理念を代々継承し、幅広い事業を手掛けるのと同時に、様々な社会事業の財政基盤を支え続けて来ました。私は2016年に5代目理事長に就任しましたが、先代からそうした意思を同時に引継ぎ、次世代につなげていく所存です。
誰もが笑顔で暮らせるように、利用者様にも職員にとっても恵まれた総合福祉施設。
現在、夢野地区に総合福祉施設として、「高齢者」、「障がい者」「こども」母子」の皆さんを支える施設を中心に7施設を運営しております。その根底にあるのが「あなたが笑顔で暮らせるように」という理念です。これは、創設時の「困窮する無告の市民を救済する」という思いを発展させ、職員が自分たちの思いを言葉にしたものです。
素晴らしいですね。理事長としては、現場は現場のプロに任せ、利用者の皆さんのためになるように、また、職員の皆さんのためになるようサポート役に徹しています。
副理事長はじめ経験豊富なエキスパートがいてくれるので安心して任せられます。
恐縮です。私は、役所で福祉行政に長年携わってきましたので、その経験や知識を見込まれ、先代の時代からお世話になっています。先代はリーダーシップもあり、尊敬できる素晴らしい方でした。現場の事は基本的には任せて頂いてきました。もちろん、不適切な点には厳しく叱責もされましたが・・・・
戦後、現在の夢野地区に集中して、各施設が再建できたのも、小曽根家の土地の寄贈を決断いただいたお陰です。このような良好で恵まれな環境に利用者の皆さんにも喜んで頂いていると思いますし、職員も頑張ってくれています。
何よりです。神戸光有会には意識が高く、優秀な職員が多く、ベテラン職員を中心にまとまり、若い方も力をつけてきていますね。
そうですね、それぞれの立場で頑張っていると思います。引き続き、全職員が同じ目標に向かって、力を合わせて「理念」を具体化していきたいと思います。そのためには、施設単位ではなく、施設間を横断的に捉えていく発想が大切だと思っています。
虐待やDV、障がい者の自立、8050問題など現代社会の抱える問題に対応すべく実践とチャレンジ。
現代は、設立以来の激動の時代と言えるかもしれません。そんな中で、社会が抱える問題も複雑になっています。悲惨なニュースを見聞きするたびに「なんで助けられなかったのか…」と思うものばかり。福祉の役目も時代と共に変化していかねばなりませんね。
同感です。法人の各施設の利用状況も変化しています。特に児童は虐待、母子はDVのシェルター的な役割が大きくなっています。児童や障がい者等への虐待も増加しています。職員の対応も必然的に専門知識・技能が求められてきます。
さらに近年問題になっているのが8050問題ですね。
80代の親が50代の引きこもりの子どもを抱えるという、デリケートで見えづらい問題ですが、深刻な事件も発生しています。この問題は、行政や福祉・介護関係者、地域社会などが相互に協力しなければ先が見えてこない課題だと思います。当法人として何が出来るかと言われると自信もありませんが、開かれた法人として情報があれば解決に協力はしなければと思います。
その他今後の課題としては、人材確保や変化する関係法や制度に対応できる職員の育成があります。また閉鎖中の診療所跡の再利用について、各施設が抱える課題について整理し、どういう利用の仕方があるのか出来るだけ早く方向性を出したいと思います。課題は山積しています。
よろしくお願いします。
福祉事業が救貧的福祉から普遍的福祉へ、措置から契約へと変化しました。しかし一方で地域では、住まいや日常の生活支援すら確保できない人が増大していると言われています。「利用者本位」の名の下で、サービスを選択することも、自ら声を上げることも困難な人が放置されることがなく、必要な人に必要な措置されることが、これまで以上に重要だと思います。創設時の理念の素晴らしさを実感し、我々はその受け皿として機能していきたいと思います。先人の皆さんの思いや実績を大切に、変化する社会にも対応できる法人づくりに、人づくりに全法人が一丸となり取り組んでまいりたいと思います。引続き宜しくお願いします。
誰もが笑顔で暮らせる社会となるよう、社会全体で、専門知識・機関を活用して取り組んでいきたいですね。神戸光有会も少しでも地域社会に貢献できるよう、皆さんのご協力をお願いします。